人間の赤ちゃんが「自分では何もできないうちに生まれてくる」理由は、その方が親の頭が良くなるから

例えばキリンの赤ちゃんは生まれて1時間程度で立ち上がり、1日以内に自分で敵から逃げることも可能になる。猿の赤ちゃんは、母親に自分でしがみつくことができる。

一方、人間の赤ちゃんと言えば、もう救いようのないほどに、何にもできない。なのに、成長すればキリンや猿なんかより(大抵は)ずっと頭が良くなる。

なぜ、人間の赤ちゃんは、自分では何もできないうちに生まれてきてしまうのだろうか?

その理由として「人間は知能が高いので頭が大きく、胎内で成長し過ぎると、産道を通れなくなってしまうから」というのは聞いたことがあったが、それだけではない、という話が The New Yorker に載っていた。

www.newyorker.com

頭の大きさと知能の関係は、赤ちゃんが早く生まれてくるためのインセンティブとなる。しかし、そのサイクルを実際に回しているのは、「成熟までの時間」と知能の関係かも知れない。

世話をする対象の生き物が何もできなければできないほど、世話役は頭が良くないといけない。つまり脳がより大きくないといけない。そうすると、出産時の脳の大きさには生理学的に制限があるので、赤ちゃんはより何もできない状態で生まれて来る必要がある。こうしてサイクルが続くのである。


つまり、「頭が大きいから早く生まれてくる」というのはサイクルの一側面であって、サイクル全体を考えた時、赤ちゃんが何もできないことは、頭の大きさを誘引しているというわけである。

なるほどね、という感じではあるが。

このモデルが本当なのかどうかを調べる一つの方法として、双子(通常妊娠期間が短く、従って成熟までより長い時間がかかる)は頭が良いか、そして双子が親になるとより頭の良い赤ちゃんを生むか? という話が紹介されている。

さあ、どうでしょうね。

吉田沙保里が負けたのは「相手の方が強かった」から

togetter.com

これを確かめるのと前後して英語と日本語の記事を見ていたが、日本語記事の方は、「落とし穴があった」「最後は勝てるだろうと思っていた」など、油断していたことを匂わせるようなコメントばかりが取り上げられている気がした。テレビを見ても、泣いて謝る姿ばかりが映しだされているように思う。

でも、吉田自身は試合直後、負けた理由をこう言っていた。「自分より相手の方が強かった」と。


その「相手」であるヘレン・マルーリスは、本来は吉田より階級が上の選手である。そしてこの2年間、公式戦で一度も負けていない。吉田はマルーリスに過去2勝しているが、2012年以降対戦していない。

今回のオリンピックで、マルーリスは、53kg級出場のために「御影石の像から骨を削り取るような」苦しい減量に耐え抜いた。その上で、対戦相手としての吉田を研究し尽くしていた。そして吉田を尊敬していた。

「過去2年間、吉田を倒すことについて話し合ってきました」マルーリスのコーチ、バレンティンカリカは述べた。「彼女のトレーニングは全て、吉田を倒すためのものでした」

(中略)

吉田を研究するうちに、マルーリスは吉田を敵というよりも理想像として見るようになった。マルーリスは、吉田の勤勉さ、勇気、謙虚さに感服し、嫌うことなどできなくなった。準決勝でマットソンを下すよりも前に、マルーリスは吉田と対戦できるならどんなに名誉なことか、と考えていた。

(中略)

「私たちは、吉田を尊敬し過ぎないよう、注意する必要がありました」カリカは言った。

U.S. wrestler Helen Maroulis faces down legend Saori Yoshida to win gold - The Washington Post


日本選手団の主将としての責任感がのしかかっていた」「勝って当たり前という重圧があった」なども理由の一つではあるだろうし、紹介すべき価値のある話だと思う。

だが、「自分より相手の方が強かった」という、相手に敬意を表した潔いコメントが、なぜあまり日本語記事にならないのだろう。

吉田は試合後、負けた理由を問われても言い訳をしなかった。


「自分より相手の方が強かった」と彼女は述べた。

「もっと早いうちに、もっと素早い攻撃を仕掛けるべきだった。でも、自分より相手の方が強かった」

Helen Maroulis becomes first ever US woman to win Olympic wrestling gold | Sport | The Guardian

最低賃金を上げるべきでない4つの理由

www.cato.org

「Four Reasons Not to Raise the Minimum Wage」より。

職が失われることになるから

― 職が失われるというエビデンスは、最低賃金導入初期から現在に至るまで確認されている

  • 1938年に導入された25セントという最低賃金は、大幅な失業を生み出した。
  • 近年、アメリカ領サモアにて実施された最低賃金引き上げの経済的影響は大きく、オバマ大統領は引き上げ実施を保留する法案に署名することになった。
  • David NeumarkとWilliam Wascherによって2006年に行われた、最低賃金に関する100を超える研究の調査によれば、約2/3の割合で就業率にネガティブな効果が認められた。
  • Joseph SabiaとRichard Burkhauserは、2010年に次のような推定を行っている。:「連邦政府最低賃金を時給9.50ドルに引き上げた場合、130万近くの職が失われる」

スキルの低い労働者にとって害となるから

最低賃金の引き上げは、本来支援されるべき人々をより害するというエビデンスがある

  • 2006年のNeumarkとWascherの調査によれば、文献からは「最低賃金はスキルの低い労働者の就業を減らすという従来の見方を大いに固める、とみなせる」
  • ニューヨーク州の時給5.15ドルから6.75ドルへの最低賃金の引き上げに関する2012年の分析は、「若く、教育をあまり受けていない個人の就業について、20.2〜21.8%の減少を確認した」
  • Michael J. Hicksによる2010年の分析「最新の最低賃金引き上げ」は「55万のパートタイム職の減少」の原因となっており、それは「約31万人の、パートタイムで働く10代」を含む。

貧困の減少にほとんど効果がないから

エビデンスは、最低賃金が貧困を減少させないことを示唆している

  • Mark Wilsonによる2012年の調査によれば、前回の連邦政府による時給5.15ドルから7.25ドルへの最低賃金の引き上げの恩恵に浴することができた貧困家庭の労働者は15%だけだった。今日、最低賃金が時給9.50ドルに引き上げられた場合、恩恵に浴することができるのはわずか11%である。
  • Wilsonによる2012年の調査はこう述べている:「1995年から、8つの研究が最低賃金による収入と貧困への効果を検証しているが、1つを除く全ての研究において、過去の最低賃金の上昇は貧困に対して何の効果もなかったと結論づけられている」
  • Wilsonによる2012年の調査はこう述べている:「最近の1つの学術的研究によれば、2003年から2007年に行われた州および連邦政府最低賃金引き上げは、州の貧困率に対して効果がなかった」

消費者にとっての物価上昇に繋がるから

最低賃金引き上げのコストは、誰かが支払わなければならない

  • Wilsonによる2012年の調査はこう述べている:2004年の「最低賃金の物価への影響についての20以上の研究の調査によれば、アメリカにおける最低賃金の10%の引き上げは、4%の物価上昇を引き起こしていた」
  • シカゴ連邦準備銀行による2007年の研究では、最低賃金の引き上げに反応してレストランの価格上昇が起こると述べられている。

映画「シン・ゴジラ」感想:良い映画の条件と、唯一悪かったところ。(ネタバレ)

映画「シン・ゴジラ」を観てきた。

その後でネット上のレビューや感想を読むと、どうも自分とは違う捉え方をしている人が大勢いるようで、「我々は本当に同じ映画を見たのだろうか?」という疑問を抱くほどだった。

でも、色々な見方ができてそれを語りたくなるということは、良い映画の条件なのだろうな、と思う。そんなわけで自分も感想を書こう。以下はネタバレ。

続きを読む

確かに、ペンの力は弱くなっている

www.huffingtonpost.jp

鳥越氏が言う「ペンの力」とは、「急ごしらえの知識で書いた記事でも、かつては世論を動かすことができた」という意味だ。事実誤認やバイアスがあっても読者からの批判に容易には晒されず、マスメディアが世論の頭上に聖域として君臨することを許されていた時代のことだ。

www.huffingtonpost.jp

彼は、「国民は騙されている」と思っている。かつて魔法のように効いた力が弱まり、国民の目を覚ますことができない。新聞も雑誌もテレビも、そして選挙活動でも、残念ながら国民の考えを変えさせることはできなかった。昔ならカンタンにできたのに、ペンにはそういう力があったのに。

残念ながら、時代は後戻りしない。今やネットは、良かれ悪しかれ大きな力を持っている。ネットを無視して世論に影響を与えることはもうできない。実務家であれば、そういう現実も直視できたはずだった。しかし、一度手にした魔法の力に縋る人間にとっては、無理な相談だったのだろう。

「古き良き時代」を懐かしむのは、老人の特権である。が、できれば懐かしむだけにしておいて欲しいものだ。

デンタルフロスはニセ医学

以前BBCで読んだ話だが、Chicago Tribuneにこんな記事が。

www.chicagotribune.com

アメリカ歯科協会(ADA)は1908年からずっとフロスの使用を推奨しているが、当時大した根拠があったわけではない。今も根拠は明確でない。アメリカ政府の食生活指針からは、フロス使用の推奨が削除された。

にも関わらず、「リスクもコストも低い。効果があるかも知れないのでオススメする」というのは、医学的にとても不誠実な態度ではなかろうか。

「ワガママが通らずその場で辞めた部下に連絡を取って、社会人としての規範を教えてあげたい」という上司が炎上

マネージャーが仕事の悩みを相談するWEBサイトにとんでもない相談があり、コメント欄が炎上しています。

小町に投稿したらどうなるか、 id:topisyu さんに解説して欲しい。

マネージャーをしています。
私のチームの仕事は、電話でのカスタマーサポートです。
最近新製品が発売された関係で、通常業務の時間外にも仕事が発生しています。
休日出勤をしている部下もいます。
(最も勤続年数の少ない部下が担当します。
 誰も自発的に休日出勤しようとは思わないので。)


ある部下が、休日出勤の日に2時間遅れて出社したい、と申し出てきました。
大学の卒業式の日と重なっているから、とのことでした。
(彼女は学位を得るために、大学の夜間授業を履修していました。)
私は、彼女の申し出を却下しました。
勤続年数の最も少ない部下は彼女で、その日は人員が必要だったのです。


私は彼女に、その2時間のための代理を見つけられるなら、
遅く出社しても構わないと伝えました。
彼女は同僚に依頼して回りましたが、
誰も自分の休日を潰そうとはしませんでした。


その後、部下のうち何人かは、他のメンバー(彼女ではなく)の残業を
代わってあげたり、シフトを交代したりしていました。
ただ、その部下たちはプライベートでも友達同士なのです。
私は、部下が自分の責任で代理を見つけられるのであれば、
勤務時間の交換について、特に口は出しません。
(注意:コンサートに行きたい部下のために、
 別の部下に残業を割り当てたことはあります。
 チケットを購入済みだったからです。
 これは金銭が絡むため特別なケースです。)


私は彼女に、2時間遅れての出社は許さない、
卒業式は欠席するしかない、と言いました。


その1時間後、彼女は私のところに来て、
IDカードと、これまで彼女が同僚全員に代わってこなしてきた、
全ての早出、残業、休日出勤のリストを差し出しました。
そして、その場で仕事を辞めてしまいました。


私は少し頭にきました。
彼女は、私の最も優秀な部下だったからです。
彼女の仕事は文句のつけようがなく、
6年間の勤務で、欠勤したことは一度もありません。
私は彼女をプライベートでも頼りにしてきました。


もうこの職場で働くことはないとしても、
自分のワガママが通らないからと言って、
事前の申し出もなく仕事を辞めるなんて社会人として許されない、
と私は彼女に伝えてあげたいと思っています。


この件を除けば、彼女は有能な部下でした。
こんな行為をまた繰り返してしまえば、
彼女は社会人として道を踏み外してしまいます。
私はそれを止めてあげたいだけです。


彼女は複数の里親の元を転々としながら育ちました。
今は、家族もなく独り身です。
18歳になってしばらくの間、彼女はホームレスを経験しました。


私たちのチーム以外には、仕事仲間と呼べる人は誰もいません。
この仕事が、彼女の唯一の仕事だったのです。
彼女には、社会人としての規範を教える人が誰もいなかったのです。
彼女が同じ間違いを繰り返さないよう、手助けをしてあげたいのです。


どのようにして連絡を取るのがベストでしょうか?

www.askamanager.org

回答者の回答とコメントで、多少溜飲は下がる。

というか、こういう humble background を持つ人の成功を、
アメリカ人は素直に賞賛する傾向にあると思う。