吉田沙保里が負けたのは「相手の方が強かった」から

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これを確かめるのと前後して英語と日本語の記事を見ていたが、日本語記事の方は、「落とし穴があった」「最後は勝てるだろうと思っていた」など、油断していたことを匂わせるようなコメントばかりが取り上げられている気がした。テレビを見ても、泣いて謝る姿ばかりが映しだされているように思う。

でも、吉田自身は試合直後、負けた理由をこう言っていた。「自分より相手の方が強かった」と。


その「相手」であるヘレン・マルーリスは、本来は吉田より階級が上の選手である。そしてこの2年間、公式戦で一度も負けていない。吉田はマルーリスに過去2勝しているが、2012年以降対戦していない。

今回のオリンピックで、マルーリスは、53kg級出場のために「御影石の像から骨を削り取るような」苦しい減量に耐え抜いた。その上で、対戦相手としての吉田を研究し尽くしていた。そして吉田を尊敬していた。

「過去2年間、吉田を倒すことについて話し合ってきました」マルーリスのコーチ、バレンティンカリカは述べた。「彼女のトレーニングは全て、吉田を倒すためのものでした」

(中略)

吉田を研究するうちに、マルーリスは吉田を敵というよりも理想像として見るようになった。マルーリスは、吉田の勤勉さ、勇気、謙虚さに感服し、嫌うことなどできなくなった。準決勝でマットソンを下すよりも前に、マルーリスは吉田と対戦できるならどんなに名誉なことか、と考えていた。

(中略)

「私たちは、吉田を尊敬し過ぎないよう、注意する必要がありました」カリカは言った。

U.S. wrestler Helen Maroulis faces down legend Saori Yoshida to win gold - The Washington Post


日本選手団の主将としての責任感がのしかかっていた」「勝って当たり前という重圧があった」なども理由の一つではあるだろうし、紹介すべき価値のある話だと思う。

だが、「自分より相手の方が強かった」という、相手に敬意を表した潔いコメントが、なぜあまり日本語記事にならないのだろう。

吉田は試合後、負けた理由を問われても言い訳をしなかった。


「自分より相手の方が強かった」と彼女は述べた。

「もっと早いうちに、もっと素早い攻撃を仕掛けるべきだった。でも、自分より相手の方が強かった」

Helen Maroulis becomes first ever US woman to win Olympic wrestling gold | Sport | The Guardian