乙武氏の行為が、不倫ではなかったとしたら

昔の話なので誰が書いたのかは覚えていないのだけど、「五体不満足」の書評で、「五体不満足は、『障害者の性』に触れてないからダメだ」というような類の意見を読んだ記憶がある。

五体不満足 完全版 (講談社文庫)

五体不満足 完全版 (講談社文庫)

その時は、これは子供も読むような本だし、そもそも障害者がエッセイを書くときに性の問題に必ず触れなければならないなんておかしいだろう、と、その書評に対して憤りを覚えた。


で、今回の問題。

この記事を読んで思ったのだけど。

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もし乙武氏が、今回のことを「不倫」と呼ばずに、自慰行為の補助を頼んでいたのです、と言っていたら、世間はどんな反応をしたのだろうか。

上の記事では、「自慰行為ができない代わりに不倫をしてしまった」という論調である。が、そうではなくて、あれらは自慰行為そのものであったのだ、と主張していたら。

もちろん、彼には妻がいて、普通なら妻に頼むべきなのだろう。だけど、子育てや家事で忙しい妻の手を毎回の自慰行為で煩わせたくはなかった、幸いにも自分には妻以外に補助を頼める女性が複数いた、と言っていたら。

いやいや、そこはたとえ奥さんが嫌がっても奥さんにやってもらえよ、とか、手がなくても自分でなんとかしろよ、とか言われるのだろうか? どうも、その批判には的外れなところがある気がする。

でも、どれぐらい的外れなのか、あるいは全く的外れでないのかは、やはり乙武氏が自らの事情を開陳しないと、わかりようがない。

乙武氏は、自らの障害をあえてネタとして扱う発言を通して、障害はいわば障害者各人の個性であり、決してタブー視するようなものではない、という主張(というか事実)を世間に浸透させようとしてきた。

今回の件は、障害者の性の問題についても、世間に浸透させる契機に成り得るのではないかと思う。乙武氏には、どうにか沈黙を破ってもらいたい。