小保方氏が実験に参加する意味と、小保方氏を実験に参加させる意味

どうせSTAP細胞なんて無いんだし、小保方氏を実験に参加させるなんて時間と税金の無駄、というのは誰もが分かっている。つまり、この実験参加には、少なくとも科学的な文脈において、意味などない。

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では、どんな文脈でなら意味があるのか。

まず小保方氏サイドから考えれば、これはもちろん雇用問題である。小保方氏は、『STAP細胞の存在を信じ、実験結果を「改竄と知らずに」改竄してしまった被雇用者である』と言う主張を崩すことはできない。つまり、小保方氏には能力は足りなかったかもしれないが、懲戒解雇に値するような不正はしていない、ということだ。

よって小保方氏は、経過や結果がどうであれ、STAP細胞の存在を信じている体で実験を続けるしかない。もちろん理研側が実験を打ち切った際には、体調不良や、理研側が与えた実験環境が不十分であることを、再現できなかった理由として挙げるのだろう。

次に理研サイドであるが、一つには当然、科学のことなど何一つわかっていない「上」に対するポーズというのはある。現在の理研の立場を考えれば、上がやらせろというならやらせるしかなかろう。

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また、世間に対しても、悪いのは小保方氏であり、小保方氏が嘘をついていたのであり、小保方氏が巧妙な不正を行っていたのであり、つまり理研は小保方氏に騙された被害者である、と主張したい。小保方氏に実験を行わせることにより、そういった世論が実験の進捗とともに、もとい実験の停滞とともに徐々に形成されていく可能性はあるかも知れない。どちらにしろ世論というのは移ろいやすいのだ。

そしてもう一つ。理研にとって理想的なのは、「監視の目をかいくぐって小保方氏が巧妙に(以前と同じように)不正を行う現場を押さえる」である。結局のところ、理研は、小保方氏の指導者がこれをできなかったことが問題の発端だと主張したい(「指導者は不正を見抜くことはできなかったかも知れないが、不正に加担をしてはいない」)のだ。遅きに失したとは言え、これができさえすれば、小保方氏を解雇することは比較的簡単だろうし、理研は不正を許さない公明正大な組織であると主張できる。今後は不正が行えない体制を構築可能であるとアピールできる。

もちろん、最後のシナリオが達成されることは小保方氏サイドの利害を考えればありえない。と思う。よって、何ら実りのないだらだらとした経過報告が、今後行われていくのだろう。