iPS細胞大戦

inspired by

@dqnchild2 記者の執拗な追求を受けた森口氏が会見の最中に注射器を取り出して「愚かな連中め!見せてやる、これがipsの力だ!」とか叫びながら自分の心臓に針をブッ刺して細胞注入、苦しみだしたかと思うとみるみる異形の怪物に変貌して、取材陣を蹴散らしつつ街に飛び出す様子がお茶の間に中継されないかなあ

http://twitter.com/dqnchild2/status/257628377790439425


街に飛び出し,破壊の限りを尽くす森口氏.その目は爛々と光り,もはや人の感情など残してはいない.ビルは倒壊し,車は踏み潰され,人々はパニックに陥り我先にと逃げ惑う.


だがその中にたった一人,逃げない者がいた.彼の名は,山中伸弥.あのノーベル医学賞受賞者,京都大学iPS細胞研究所所長その人であった.


「森口さん……ついに,iPS細胞の闇の力を使ってしまったのか」


その右手には,森口氏が使用したのと同じような注射器が握られていた.


「これ以上,iPS細胞による犠牲者を増やす訳にはいかない.私の命に替えても,君を止めてみせる!」


注射器を自らの心臓に近づけていく山中教授.


「やめてください,先生!」


突如声をかけたのは,山中教授の共同研究者,高橋和利講師であった.


「それを使えば,かつて先生が森口さんと同じ,闇の研究所に所属していたことが公になってしまいます!」


高橋講師が叫ぶ.


「仮に森口さんを倒せたとしても,今度は先生がマスコミの標的になります.読売新聞は生やさしい組織じゃない……きっと,ノーベル賞だって剥奪されてしまう!」


山中教授は,じっと高橋講師を見つめ,そして言った.


「高橋くん.君も知っての通り,私は昔,闇の研究所で森口さんと共同研究をしていた.iPS細胞の力に魅せられ,道徳やら倫理やらは全て蔑ろにしていた.自分たちの体に改造を施しもした.


 だが,ある時気づいたんだ.iPS細胞はあまりにも強力だ.だからこそ,決して悪の為に使われるべきではない,と.だから,闇の研究所を逃げ出した.それ以来,常に命の危険に晒されながら,独自で研究を続けてきた……どうすればこの力を正義の為に活かせるのか,それだけを考えながら」


山中教授は,今一度,注射器を自らの心臓に近づけた.


「正しいことのためにiPS細胞を使う,それが私の研究の目的だ.そして今,人々が苦しんでいる.それを止められるのは,私しかいないんだ!」


「先生!」


心臓にiPS細胞を注入するや,山中教授の体は――森口氏と同じく――異形の怪物へと変貌した.だが,その目には,理性の光が宿ったままだった.


(続かない)