豊かさの誕生
- 作者: ウィリアムバーンスタイン,William J. Bernstein,徳川家広
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 38回
- この商品を含むブログ (39件) を見る
経済成長がどうたら、と言う話があった。
断言しよう。経済成長を追っているうちはまだ日本は中二病なのだと。
それはどうだか知らないが。
そもそも経済成長というものがいつ始まったのか。答えははっきりしている。1820年前後だ。
それ以前の世界には、「経済成長」は存在していなかった。全人類平均の一人当たり経済成長率はほとんどゼロだった。しかしその状況は、1820年前後を境に激変する。
私たちは現代こそが劇的な技術革新の時代だと考えがちだが、これはうぬぼれた幻想でしかない。
p.16
1950年に先進国に暮らしていた人間であれば、2000年のテクノロジーを理解するのに、さしたる苦労は必要ないだろう。ところが1800年から50年後の世界にタイムスリップした人間は、間違いなく大混乱に陥る。
p.17
一般的には、そのあたりで産業革命が起こり、技術革新が始まったのだから当然、という気がする。だがこの本はさらに次の問いを発する。
なぜ世界経済の成長と、その前提となる技術革新は、1820年前後というタイミングで爆発的に起こったのか。なぜレオナルド・ダ・ヴィンチが考案した蒸気機関や飛行機械は、ルネサンス時代のフィレンツェでは実現されなかったのか。なぜ冶金技術に長けたローマ人は、電気の発見や電信の発明にいたらなかったのか。なぜ数学にすぐれたギリシャ人は資本市場の機能に不可欠な確率論に到達しなかったのか。さらに言えば、なぜアテネ人はペルシャ戦争での勝利からアレキサンダーによるギリシャ征服までの二世紀間、貧しいままだったのか。その時代には民主主義、私有財産権、自由市場、自由な中産階級など、経済成長の前提だと広く認められている要素は、みな揃っていたというのに。
p.2
この問いに対する本書の答えは簡潔である。次の四要素が全て揃ったとき、経済成長が始まる。一つでもかけていてはダメだ。
- 私有財産権
- 科学的合理主義
- 資本市場
- 輸送と通信の進歩
民主主義(民主制)は蚊帳の外である。
本書ではまた、経済成長が民主主義をもたらすのであって、民主主義が経済成長をもたらすのではないということ、そして民主主義の「行き過ぎ」は経済成長に有害であることも明らかにしている。
p.20
なぜこの四要素なのかは本書の第一部で説明されている。第二部はそれらが各国でどのように展開していったかが書かれている。
第三部では、第一部と第二部の内容を踏まえて「これからどうなる」が論じられている。
経済成長による豊かさは幸せをもたらすのか?
ある国が経済成長を遂げたからといって、その国民が幸せになるとはかぎらないが、その国の政治は民主化するだろう
p.416
発展途上国の成長を支援するにはどうしたらいいか?
道路を造り、診療所を開設し、ダムを築く前に、まず裁判官や弁護士を訓練すべきなのだ。それから、じっと待つことである。
p.415
久々に熱中して読んだ。面白かった。