塾帰りの小学生


仕事帰りに漫画喫茶に立ち寄って、退廃的で無駄で充実した数時間を過ごした後。


時刻は、22時の少し前だった。店から出てきた私の前を、一人の小学生が横切って歩き去った。こんな時刻にこんな場所に似つかわしくないと思ったが、すぐに理由が分かった。漫画喫茶の隣の建物に学習塾が入っていて、そこから出てきたようだ。つまり、授業が終わって帰るところだったのだろう。


私は、その子の後ろ姿を少しの間眺めた。3年生か4年生ぐらいだろうか? 私には子供の年齢というものがよくわからない(見た目では)。

子供の頃は、大人の年齢がよくわからなかったが。


しかし小学生がこんな時刻までよくもまあ勉強なんてしてるもんだ、と思った。小学生なのに。自分が小学生の頃は、勉強した記憶なんてほとんど無い。


もっとも塾通いの子供を見るのはこれが初めてではない、というよりも見慣れているし、今ではこれが普通なのだろう。そういうもんなんだろう。


子供の数が減っているのだから受験勉強なんて昔に比べれば厳しくないと思うのだが、大学進学以前に公教育の荒廃を始めとした「勉強する環境の二極化」が進んでいて、早いうちに「下」のレベルから抜け出さないとずっとそのままになってしまう、だから早いうちにいい学校(つまり私立だ)に進んでおく、そのために勉強をする、などという話は聞いてはいる。


それが嘆かわしいなどと軽々しく言うつもりは無いし、自分の子供の頃を振り返ってみてもなにか勉強の代わりに有意義なことをしていたかと考えれば取り立てて何をしていたということも無いわけで、だとすれば塾に行っていようが何をしていようが別に構わない、と自分では思う。


それでも、なんとなく釈然としない気分になるのはなぜなのだろう。無駄な時間を無駄だと、あるいは本当は無駄では無いと、そんなことを考えるような年になったからだろうか。


……ああ、あれだな。一人で夜道を帰るのは危ないよと。迎えに来てもらえよと。そういうことかな。