子供の頃、「大人は完璧だ」と思っていた。


子供の頃、「大人は完璧だ」と思っていた。


親にいろいろなことを質問しても時に答えてくれないのは、時間が無いか面倒くさいかあるいは私が理解できないので言っても無駄だと考えているのだろうと思っていた。自分にはわからないことがいっぱいあるが、親にはわからないことなどない、そう思っていた。


少し成長して、親にももしかしたらわからないことがあるのかも知れないと思うようになった。が、それでも世の中の大人の誰かしらはそれを知っていて、つまり大人の知識を全て足し合わせれば世の中にわからないものなどあるはずがない、と考えていた。


それがはっきり間違いだと気がついたのは、自分があの頃考えていた「大人」になってからのような気がする。


子供の頃と同じく、今の自分にはわからないことだらけである。仕事で成功するにはどうすればいいのか。楽して暮らしていくにはどうすればいいのか。彼女を振り向かせるにはどうすればいいのか。彼女とうまく別れるにはどうすればいいのか。


大人になってもわからないことはわからない。わからないという点では、子供の頃と全く同じだ。


子供と違うのは唯一つ、答を求めてもそれがわかる人など世の中にはいない、と確信していること。いや、確信と言うよりも、「あきらめ」と言ったほうがいいのかも知れない。